キアリ奇形と脊髄空洞症

2017年11月29日水曜日

心と身体

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キアリ奇形1型と脊髄空洞症の合併症という珍しい病気にかかり、治療したので書きとめておきます。
(それぞれどのような病気なのか、どのような治療をするのかは上記病名をWikipediaへリンクしてありますので、そちらを参照してください)
脳ドックを受けたことがない方、これから治療を検討されている方の参考になれば幸いです。

今年(2017年)9月、市の人間ドックのオプションで脳ドックを受診しました。
特に症状などはなかったのですが、一度受けておくかぐらいの軽いノリでした。

脳ドックの結果、キアリ奇形と脊髄空洞症の合併症が見つかり、手術による治療をするため大学病院を紹介されました。

さっそく大学病院へ行き、改めてMRIやCT、血液検査などを行い、キアリ奇形と脊髄空洞症の合併症は間違いないことが確認されました。
先天性なのか後天性なのかは不明。
主治医からは症状も出ていないし経過観察するか、大後頭孔減圧術(外科手術)による治療を行うかの選択を迫られました。

手術内容をざっくりまとめると以下のとおり。
  • 後頭部の皮膚と大きな筋肉を切開
  • 硬膜にめり込んでいる後頭骨の下側半分を切除
  • 硬膜をY字形に切開し小脳にかかっている圧を開放
  • 開放したスペースには人工硬膜を継ぎ足し接着剤で補強
  • 第1頚椎の椎弓を切除(わっか状の骨の後ろ側を切ってC形に)
悩みました。
脳本体へ手を入れるわけではありませんが、やはり脳の手術というのは怖いものです。
ましてや自覚症状がないのにそこまでやる必要があるのか・・・。
入院期間は10日から2週間程度とのこと。
家族とよく相談した結果、症状が出てからでは遅いので治療してしまおうということになりました。

2017年11月17日(金)、入院。
手術予定は翌週月曜日なので3日間は病院内をフラフラと散策したりゆったり過ごしました。
今時の大きな病院にはコンビニもあり、おやつなど食べたりもできちゃいました。
この後訪れる地獄を甘くみて・・・。

2017年11月19日(日)、手術前夜。
18時の夕食を最後に、21時以降翌朝6時半までの間に経口補水液OS-1を1リットル飲み、それ以外は飲食禁止。
夜の内に1本半(750ml)ほど飲んでしまい、トイレに何度も行ったので全部出ちゃったんじゃないかなどと考えましたが、それでも意味があるんでしょうね。

OS-1は今回はじめて飲みましたが、ポカリスエットを思いっきり塩っぱくしたような味で、美味しくはないけど飲めなくはない感じでした。
熱中症対策にもなりますので夏は何本か冷蔵庫に入れておくと良いかもしれませんね。

2017年11月20日(月)、手術当日朝。
朝9時過ぎに手術着に着替え、エコノミー症候群防止のストッキングを履き手術室へ。
名前や生年月日、手術内容を医師や看護師と最終確認。
全身麻酔をかけるために仰向けでベッドへ固定され、様々な器具を装着され、麻酔医から「それじゃ眠くなりますよー」と言われた直後に気絶してしまいました。
そしてうつ伏せの手術台に移さされ、頭をピンで固定され手術開始になるわけですが、当然痛みも記憶も全くなし。

同日夕方、ICUにて目覚める。
誰かに「わかりますかー。自分の名前を言ってみてください。」と声をかけられて意識が戻ったのに気づきましたが、目が開きません。
感覚としては眠った直後に叩き起こされた感じでした。
回らない呂律で名前を言っているうちに目が見えるようになってきました。

最初に目に入ったのは家内の顔。
あー手術が終わったんだと認識するとともに、確か「目が見えるよー」みたいなことを言った気がします。
とにかく無事であることを家内に伝えたくて自然に口からでた言葉がそれでした。

ここまで約7時間。
麻酔が効くまでの時間、覚めるまでの時間がそれぞれ約2時間、手術そのものは約3時間だったようです。
ここで家内は帰宅。7時間も待っててくれてありがとうね。

少し離れたところからは主治医(=執刀医)とスタッフの「俺もうあがっていい?」「いいっすよー」みたいなやりとりが聞こえてきて、手術は成功したんだと安心しました。

そして麻酔が切れたここからが地獄の始まりでした。
真っ平らなベッドに仰向けで寝かされています。
普段でも枕なしでは肩や首の収まりが悪く寝心地が悪いと思います。
この状態で横に転がっても良いが首を起こすなとのこと。
枕なしで横を向いたらなおさら首に負担がかかり苦しい体勢になります。

さらに酸素吸入マスクからの噴射が鼻腔にかなりの強さで直撃しており、鼻の奥と喉がカラカラで張り付くような痛みが続き、これがまた苦しい!

何度もナースコールをして口の中をスポンジで湿らせてもらうのを繰り返しますが、乾いて痛いところまでとても届かず、でも水を飲むわけにもいかず、苦しい状態が続きました。
看護師にこれがいつまで続くのか尋ねると「少なくとも明日の朝の回診までですね。ちなみに今19時ですが。」・・・マジか・・・。
あと何時間あるんだと回らない頭で計算したら、短く見積もっても12時間以上。
とても耐えられないなと考えているうちに嫌な汗が吹き出してきて、パニック状態になりかけました。
看護師にその旨を伝えましたが、医師からはフラットを維持せよと命令されているので、とにかく我慢してくださいのような回答。
それでも我慢の限界ですと訴えると、帰宅したと思われる主治医をわざわざ呼び出してくれ、先生と話ができました。
その結果、枕を入れましょうということになり、病室用の枕を入れるが固くて高すぎ、バスタオルを折りたたんで頭の下に入れるぐらいにしてもらい、なんとか体勢は落ち着きました。

体勢が落ち着いたら、今度は切った後頭部の痛みが気になりはじめました。
激痛ではないものの、なんとも表現しがたい鈍い痛みが続きます。
筋肉痛の強烈なやつとでも言いましょうか、切った筋肉を縫合してあるんだからそういう痛みですよね。
皮膚を切った鋭い痛みはほとんど感じませんでした。

それよりも酸素直撃の鼻腔と喉の痛みが耐えられません。
もう遠慮する余裕もなく何度もナースコールしてしまいました。
マスクをやめ、鼻に管を差し込むタイプに変えてみることに。
しかし酸素が吹き出す勢いが変わるわけではなく、ほとんど変わりません。
マスクとの違いは口がフリーなのと、鼻には浅く差し込まれているので少しずらせることでした。
これでほんの少しだけ楽になったと思ったのもつかの間、やはり鼻腔と喉の乾きと痛みは続きます。
鼻で吸い込めば鼻腔の奥が、口で息をすれば喉の奥が痛みます。
しかも管をずらしたり口で息をすると血中酸素濃度がすぐに落ちるらしく、監視機材のブザーがなってしまいます。
そこで思いついた手段が(本当はダメなんでしょうけど)、管を外して鼻と口でそーっと呼吸をする。
酸素濃度不足のブザーが鳴ったら鼻の管から酸素を吸うというテクニックw。
これで乗り切りました。

そしてこれまた初体験、痛み止めの医療用麻薬。
2時間おきに点滴に割り込ませて注入されます。
・・・が、これが思ったほど効かない、というより効いてるのか?というレベル。
末期がん患者や戦場で傷を負った兵士に打つのと同じかと思いますが、いくら麻薬でも抑えられないものなんですね・・・。
やっぱりそれとは違うもので、弱めな麻薬だったのかな?

2017年11月21日(火)、ICUから一般病棟へ。
そうこうしてるうちに朝を迎え、経過に問題がないのでCTを撮って一般病棟へ戻ることになりました。
鼻腔と喉の乾きと痛みはピーク時と変わらない辛さのままでした。
酸素吸入が外れたことでほんの少し楽になりましたが、スポンジでこまめに口を湿らせながらの移動です。
これまでに何度「水くらはい・・・」と言ったことやら。

ICUのベッドからストレッチャー、CTの機械、一般病棟のベッドへと何度か持ち上げられましたが、いちいち切った後頭部を思いっきり持たれるのが怖くて怖くて仕方ありませんでした。
いくら怖くても「そこ触らないで!」と抵抗することもできず、されるがままです。

一般病棟のベッドに戻っても体勢がなかなか落ち着かず、ずっとモジモジしていた気がします。
仰向けになりたいのに後頭部が痛いし着くのが怖い。
横を向くと肩と首に負担がかかる。
38度前後の熱も続いて意識も朦朧としてきて、どんな体勢か覚えていませんがそのうち眠ってしまいました。

2017年11月22日(水)から23日(木)、熱と痛みは続く。
術後2日間は痛みも熱も引かず、辛い時間が流れました。
食欲もなく、おかゆを少し食べる程度。
家内が何度か来てくれましたが何を話したか覚えていないほどです。
手術前の説明で、術後2~3日は痛みが続きますよとは聞いていましたが、ここまでとは想像できませんでした。
痛いというよりも辛い、しんどいのです。

2017年11月24日(金)から26日(日)、ようやく落ち着き始める。
37度台の微熱は続いていましたが痛みは治まってきて、楽な体勢もなんとなくわかってきたのでおとなしく過ごしました。
シャワーは術後4日目の24日に解禁。
切った所を洗うのは怖かったので、そこだけ看護師さんに手伝ってもらいました。
特にしみることもなく、他の場所は頭も身体もかゆかったので気持ちよかった!
この辺で食欲も戻って普通食に切り替えてもらいました。

2017年11月27日(月)、抜糸。
内側から、硬膜は接着剤、筋肉は溶ける糸でぎっちり縫合、皮膚は医療用ホチキスで13か14針で縫われていました。
カラーだとちょっとグロすぎるのでモノクロ写真を貼ります。

医療用ホチキスの抜糸は痛いよーと色々な人から聞いていたので覚悟していましたが、これは髪の毛を抜く程度の痛さで大したことありませんでした。

この日の夕方MRIを撮影し、主治医から経過の説明を受け、退院の相談をしました。
術後の経過が良いため、退院日は翌日に決まりました。

2017年11月28日(火)、退院。
めでたく退院です。
家内に迎えに来てもらい、自分で運転して帰宅しました。

最後に。
人間ドックでオプションを付ける選択肢があれば極力つけましょう。
特に症状が無くても何か見つかるかもしれません。

もしキアリ奇形がみつかって脊髄空洞症の症状が出ていない場合の治療ですが、ちょっと悩ましいところですね。
手術そのものは気絶している間に終わるので怖がる余地もありませんが、術後がとにかく辛かったです。
最後まで症状がでない人もいるようなので、こんなに辛い思いをしてまで治療する必要があるのかと言われると無いような気もしますが、私はやってよかったと思います。
痛みや熱さに鈍感になり怪我や火傷をしやすくなる、手足がしびれる、筋肉が萎縮して身体が動かなくなっていくなどの症状は、それはそれで辛いでしょうから。

気になる治療のお値段ですが、実はまだ請求が来ていないため詳細はわかっていません。
しかしながら保険適用で10~20万円と思われます。
事前に高額医療費制度の申請をして限度額適用認定証を入手しておきましょう。
収入に応じて限度額が変わりますが、自己負担額が大きく軽減される可能性があります。

以上、長くなりましたがわかりづらい点などありましたらコメントください。
訂正させていただきますし、質問があればわかる範囲でお答えします。


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